クロスセル成功のためのクリエイティブのコツVol.1

クロスセルの確度を上げる2つのルール

第23回は「クロスセルの確度を上げる2つのルール」をテーマにお送りします。通販企業様では、「全体の売上を底上げしたい」「クロスセルが上手くいかない」というお悩みをお持ちのところも多いのではないでしょうか。

CRMの現場から、通販ディレクターA氏とデザイン制作会社のS氏と共に、クロスセルを成功させるクリエイティブのコツをご紹介します。

なぜキャンペーンや特典で効果が出ないのか

A氏:クロスセル率を上げるための施策について、当ブログでも何度か取り上げてきましたが、まだまだ苦戦されている通販企業も少なくありません。

S氏:どんなコンテンツがクロスセルに有効なのか分からないという企業が多いように思います。セット価格をどのくらい値引きするか、プレゼント品を何にするかなどキャンペーンの内容について考えがちで、チラシを企画しても毎回セットの中身や特典を変えるだけになってしまっているのが気になります。

A氏:キャンペーンに惹かれてクロスセルをしてくれる顧客もいます。しかし、クロスセルを成功させるためにはキャンペーンの内容だけに注力するのではなく、クロスセルしたい商品の必要性や魅力をどう伝えるかが大事なのです。


クロスセル成功の2つのルール

A氏:クロスセル率アップのために、「(1)今使用している商品の満足度を上げる」または「(2)クロスセル商品の必要性と魅力を強く感じてもらう」、あるいはこの両方を実現することが重要です。

S氏:(1)については、「効果実感を高めるために、正しい使用方法を伝わりやすくする」「効果以外の商品価値が高まる情報を発信する」「使い続けるモチベーションを保つために、効果への期待感を高める」「まずは購入した商品の理解を深めるために、クロスセルの施策は2回目同梱以降にする」などが大切というお話でしたね。

A氏:要するに、「今使っている商品が良いので同じシリーズ、ブランドの商品も良いはずだ」と顧客に思ってもらうことが重要なのです。(1)の内容は当ブログ(以下リンク)で詳しく解説しているので、ぜひご覧いただければと思います。今回は(2)のクロスセル商品の必要性と魅力をどのように強く感じてもらうかに注力して説明します。


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クロスセル訴求で大切な2つのポイント

クロスセルしたい商品の必要性と魅力を訴求するうえで、大切な2つのポイントをご紹介します。

① 情報感度に合わせて訴求内容を変化させる

商品に関連する知識量や情報感度の高さは、顧客によって異なります。例えば、LP、通販同梱チラシや美容系記事が多いWebサイトからの顧客は、情報感度が高めという考えができます。情報感度が高い顧客にありきたりな情報を発信しても読んでもらえず、逆に情報感度が低い顧客は基本的な情報でないと興味をそそられないでしょう。また、「夏は紫外線」「冬は乾燥」など、季節ごとにお悩みや刺さる内容、共感できるポイントは変化します。そのため、クロスセルを成功させるには、顧客の情報感度の高さや季節によって、テーマ、商品の訴求内容を適宜変える必要があります。

以下は、美白スキンケア商品を購入した顧客に、日焼け止めなどの商品をクロスセルする場合の事例です。

クロスセルを目的としたチラシを企画する際、顧客が日焼けによる肌ダメージについてどの程度知識があるかを仮定し、情報ピラミッドを作成します。その説明を読んだ時に顧客がどう思うかを軸として、ピラミッドの最下層から順に4層に分けて「言われれば、そうだと思う」「知っていたけど、違った」「知りたかった」「知らなかった」情報を入れ込んでいきます

例えば、最下層の「言われれば、そうだと思う」の部分には「室内でも紫外線は肌に届いているので、外出しなくても肌はダメージを受けている」、最上層の「知らなかった」の部分には「頬の周りにできるシミは、クレンジング時の摩擦が原因だった」などの情報を入れます。

情報ピラミッドを作成したら、これを元にどの層をテーマにして企画を組むかを考えていきましょう「クロスセルしたい日焼け止め商品は以前別の企画でも取り上げたので、基本的な情報はすでに知っているはずだ。今回は情報ピラミッドの最上層の内容をアテンションに使おう」という具合です。

顧客の情報感度の高さによって企画内容を変え、送付リストを分けるとさらに効果的です。

顧客一人ひとりの情報感度の高低は、どんな企画を打った時にレスポンスがあったのかをデータとして蓄積していくことで測ります。

データが揃うまでは、情報ピラミッド内4層のそれぞれにあるテーマをローテーションで取り上げ、仮説を立てたうえで顧客に送ることを繰り返し、データを集めていきます。


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② 顧客に合わせて電話受注時におすすめする

美白スキンケア商品を購入した顧客に対して、日焼け止めなどの商品をクロスセルしたい場合、これら2つをセットにして割引価格で売るのはもちろん、コールセンターでの受注時におすすめすることも有効です。今回のキャンペーンチラシを見たか確認のうえ、同じ内容を口頭でも伝えたり、顧客のお悩みや肌の状態などを聞きながら適宜情報を発信したりしてクロスセルを促します。

電話受注時のクロスセルにおいて、今回の企画意図をオペレーター側が十分に把握しておく必要があります。企画側はトークスクリプトを用意するのではなく、事前に打ち合わせしながらどのような狙いがあって企画を組んだのか等をコールセンター側にきちんと説明しておきましょう。

なお、当然のことですが、必要最低限の会話しか望まない顧客、特に30〜40代には要点のみで短く切り上げる、話をしたい60代以上には丁寧に説明するなど、年代に合わせた応対が大切です。

上記2点を実行するうえで、まず大事なのは顧客を深く知ることです。
年齢や性別はもちろんのこと、顧客とコミュニケーションをとった時の記録、購入履歴から推測されるライフスタイルやお悩み、情報感度の高低等を総合して、その顧客に向けてどんな情報を発信すれば興味を示し購入してくれるのか、仮説を立てて何度も検証していくことが重要です。


アップセル・クロスセル施策で顧客単価を上げてLTV最大化

アップセルとクロスセル施策はLTV(顧客生涯価値)最大化に向けて非常に重要な要素です。顧客単価を上げることは、収益の増加に直結し、長期的な顧客の価値を向上させることにつながります。以下に、それぞれの施策の意義とLTVに与える影響を説明します。

アップセル施策

アップセルとは、既に購入意向を示している顧客に対して、より高価な商品やサービスを提案することです。顧客が最初に購入した商品のアップグレードやバージョンアップなどの追加オプションを提案することで、顧客単価を引き上げることができます。

アップセルはLTVを最大化する上で重要な理由があります。高単価の商品を購入した顧客は、一般に長期間にわたってブランドとの関係を継続しやすい傾向があります。

さらに、満足度の高い高価な商品を提供することで、顧客のロイヤルティを向上させ、リピート購入率を高めることが期待できます。

クロスセル施策

クロスセルとは、既に購入した商品に関連する別の商品を提案することです。

例えば、スマートフォンを購入した顧客に対して、保護ケースや充電器を提案するなどがクロスセルの例です。

クロスセルもLTVの向上に重要な役割を果たします。関連性のある商品を提案することで、顧客のニーズを満たす機会を増やし、顧客の満足度を高めることができます。

また、複数の商品を購入した顧客は、単一の商品を購入した顧客よりも長期間にわたってブランドとの関係を維持しやすい傾向があります。

アップセルとクロスセルの施策を組み合わせることで、顧客単価の向上とリピート購入率の向上を両立できます。それにより、顧客の生涯価値を最大化し、持続的な収益の成長を実現することが可能となります。

関連記事:商品同梱チラシ(DM)「アップセルのための」クリエイティブ−定期にグンと引き上げるのコツ

通販会員へクロスセルによってでLTVの最大化を目指す!そのの注意点とは?

クロスセルを活用して通販顧客会員のLTV(顧客生涯価値)を最大化をねらうため、、以下の注意点を考慮することが重要です。

ターゲット戦略

LTVを向上させるためなら、誰にでもクロスセルすれば良いというわけではありません。顧客自身が、ブランドや商品をきちんと理解し永く買い続けてもらえるかどうかでLTV指標は率の部分で大きく変わるはずです。商品を永く使っていただける愛用者になり得るかどうか、自社商品、ブランドにあったターゲットを適切にしぼってクロスセルを仕掛けることが重要です。

関連記事:【CRM_vol.2】顧客セグメントはDI+RFM+Aが成功のカギ

適切なタイミング

クロスセル提案は適切なタイミングで行うことが重要です。例えば、顧客が特定の製品を購入した直後や、既存の製品と関連性のあるタイミングにクロスセル提案を行うことで、成功率が高まります。

パーソナライズドアプローチ

クロスセル提案は顧客に合わせたパーソナライズドなものであるべきです。顧客の購買履歴や好みに基づいて、関連性の高い提案をその理由を持って行うことが重要です。
同じ商品を買ったからといって、クロスセル商品もワンパターンではないはず。パーソナライズの内容は、上記のターゲット戦略とも紐づく設計が必要です。

付加価値の強調

クロスセル提案において、製品やサービスの付加価値を強調しましょう。顧客にとってなぜそれが必要であるか、どのような利益や便益が得られるかを明確に伝えます。

顧客セグメントの分析をベースに、「そんなあなたに、ぜひこれもおすすめしたい」とたたみかけることでこれにより、顧客の関心を引きやすくなります。

簡潔な説明

クロスセル提案は簡潔で分かりやすいものであるべきです。顧客が提案内容を理解しやすいようにし、説明が長すぎないように気をつけましょう。

特に、セット商品などでお得感を訴求するならば、金額がいくらお得なのかをしっかり書き込む必要があります。

効果のモニタリング

クロスセル提案の効果を定期的にモニタリングし、成果を評価しましょう。クロス商品の認知率からその購買率まで、クロスセル施策自体がどこまで期待通りであったかをデータ・数値でトラッキングし、必要に応じて戦略を調整します。

長期的な視点

LTVを最大化するためには、クロスセル提案を単なる一時的な売上増加手段ではなく、長期的な顧客関係の一部として捉えましょう。顧客に価値を提供し続け、継続的な購買を促進します。

クロスセルは、顧客との長期的な関係を築き、収益を増加させることを前提としています。

顧客との関係が悪化しないように、上記で解説した注意点を考慮しながら、クロスセル施策によるLTV最大化を目指すことが大切です。


まとめ

クロスセルを成功させるには、今使用している商品の満足度を高めたり、クロスセル商品の必要性や魅力を強く感じてもらうことが大切。

顧客一人ひとりの情報感度の高さやお悩み、また季節などにより、その都度訴求内容を変えることで購入意欲を高める。


筆者プロフィール

A氏
化粧品、健康食品通販メーカー、化粧品OEM企業に勤務を経て独立。20年にわたり事業計画、商品企画、新規獲得、CRM戦略、バックヤード設計・運用など通販事業の運営に必要なすべてのセクションに従事。独立後は化粧品、健康食品をはじめ多数の通販企業の立ち上げから事業支援による事業収益改善に携わる。

S氏
デザイン制作会社にて30年にわたりセールスプロモーションツールを制作。ここ15年は化粧品、健康食品をメインとした新規獲得やCRMの制作に携わる。


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